●お金の使い方は理論ではなく、自身の経験に基づいて判断を行う。
人は、自身が経験したこと(直接的な経験)に基づいて行動を行う。
このため、世代、親の収入や価値観、地域などで人それぞれの考えが違い、お金や投資判断に関しても考え方が多種多様だ。
このため、ある人にはおかしいお金の使い方かもしれないが、一方である人には説得力のあるお金の使い方をしている。
例えば、アメリカの貧困層の人が高所得層の4倍も「宝くじ」を購入してる。
貧困層の人々は貯蓄もほぼできない中、なぜ宝くじを買うのか。非合理にも見えるお金の使い方ですが、給与が劇的によくなることも見込めず、家族を養い、できれば子供に高い教育を与えたいと考えるとどうしても一攫千金を狙って宝くじを購入する道を選ぶ。
●投資判断は、自身の若いころの環境によって左右される
投資判断においても、環境要因(いつ、どこで生まれたか)によって大きな差が生まれる。
2006年、全米経済研究所の経済学者ウルリケ・マルメンディエとステファン・ナーゲルはアメリカ人のお金の使い方を詳しい調べた「消費者金融調査」の50年分のデータを分析した。
理論上「人々は、それぞれの経済的な目標や投資対象の特徴を加味して、投資判断を行っているはずだ」と考えるが、実際にはそうではなかった。
分析の結果、人々は生涯にわたる投資判断を、成人して間もないころの経験に大きな影響を受ける。
例えば、株式市場が好調な時代に育った人は、株価低迷の時代に育った人に比べて、その後の人生での株式に投資する額が多かった。
つまり、頭の良さや、職業、教養ではなく、10代、20代の環境に大きく投資の判断が左右されているのだ。
●お金の問題は人類にとって「新しすぎる問題」
これらのように、経済的な判断(貯蓄・投資)をうまくできないのは「人類にとって新しい問題」だからだ。
老後の生活を考えるようになるはせいぜい2世代前に過ぎない。
日本では1955年時点では平均寿命が60歳台であるが、2024年では平均寿命が80歳台と劇的に伸びている。
日本の国民年金(基礎年金)が始まったのも1961年と約60年の歴史しかなく、インデックスファンドの歴史などは50年も満たない。
このようにお金に対しておかしなことをするのは、誰もがこのゲームに慣れておらず、自身が経験した独自の見解で意味がある
と感じる行動しかしていないのである。
※出展「サイコロジーオブマネー」