・運とリスク
運とリスクは兄弟のようなもの。どちらも個人の努力を超えた大きな力に左右される。
だが、世の中の成功や失敗も大きく運、リスクに左右されているが、成功は本人の努力、失敗は本人のミスと思われがちだ。
・正確に読み取れない成功の確率
ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラーは「投資に答えのない問いが多くあるが、もしその中から1つだけを知りえるとしたらどの問いを選ぶか?」という問いに「成功における運の正確な役割」と答えた。
これは、誰もが気にしているが、見逃している問題である。
私たちは、本心では経済的な成功は運が全く影響しているとは思っていない。
だが、運を具体的な数値で表すのは難しく、誰かの成功を運によるものだとほのめかすのも無礼に当たる。
だから、成功をもたらす要因の一部が運だという事実を見て見ぬふりをする。
経済学者のバシュカー・マズムダーによれば、兄弟間の収入は、身長・体重などよりも相関性が高い。
つまり、金持ちで背が高い人がいたら、その弟は長身であるより金持ちである方が可能性が高い。
このことは、「人の経済的豊かさは両親の社会経済的な高さが起因している」と直感的に理解している人は多いはずだ。
ただ、多くの兄弟はたいてい「自分たちはこの研究結果は当てはまらない」と思っている。
成功と同じように「失敗」も同じように誤解される。
破産や目標が達成できないときも、運以外の努力や製品など別の何かが原因だと考えられがちだ。
ただ、失敗の原因がどれだけ当てはまるのか、正確に知るのは至難の業だ。
・極端な成功、失敗は参考にならない
危険なのは、運およびリスクの要素で成功・失敗した個々の事例を見て、何がうまくいき、何がうまくいかないのか学ぼうとすることだ。
個別の成功例や失敗例を見て教訓を見出そうとしてしまう。
結果のうち再現性のある部分と偶然の運やリスクによってもたらされた部分の割合を正確に知るのは不可能である。
法の網をかいくぐって成功した億万長者もいれば、不正に手を染め結局は破滅に至った犯罪者もいる。
何が運で、リスクで、再現性のある技能なのか見極めるむずかしさほど資産形成における大きな問題はない。
だが、それでもよりよい方向に導く指針は2つある。
1つは誰かを絶賛しあこがれるときや、誰か見下すときは気を付けること。そして、誰かの成功や失敗の原因が100%その人の努力や判断にあると思うのは注意が必要だ。
・極端な例を見ず、パターンを見つける
大切なのは特定の個人・事例であなく大きなパターンに注目することである。
多数の成功・失敗に共通するパターンを探すことで、教訓を得ることができる。
逆に極端な成功者(ウォーレンバフェットのような)を目指すのは大変難しい。
成功における運の役割を理解することで、失敗におけるリスクも理解できる。
失敗を教訓とすることで、良い方向に進むと信じながら進むことが改善の方向に進んでいく。
また、成功することで勘違いをすると今度は隣人であるリスクに喰われ、真っ逆さまに転落することになる。
人生は運とリスクで大きく影響されているのを自覚すべきである。